防災ラジオの役割と必要性について考えてみる

災害が起こるたびに見直されるラジオの存在。
それと並行して自治体などでは防災ラジオの導入を議会などで進め、災害対策として住民に配る。

防災ラジオとは?

防災ラジオは一般的なラジオに地元のコミュニティFMを簡単に選局できるスイッチが付いていたり、60MHz帯での防災行政無線を受信できたりするラジオ。
防災行政無線付きの防災ラジオは、電源を入れていなくても緊急信号を受信すると自動で起動するようなシステムが内臓されていて、防災に特化したラジオである。
多くの自治体がメーカーに協力してもらい製作し希望する世帯に配布している。

大分県日田市では配布されず在庫の山に

Yahooニュースの記事によると大分県日田市では防災ラジオを作ったものの、申請する住民が少なく9千台が在庫の山となっている。
本当に必要なものなのだろうか?
≪関連リンク:日田市の防災ラジオ、在庫の山 申請伸びず9千台倉庫に眠る

市民に無料で貸し出す大分県日田市の防災ラジオ約9千台が、利用されず倉庫に眠っている。総事業費約7億円をかけてほぼ全世帯分を購入したものの、予想したほど申請がなかった。苦肉の策として避難所や福祉施設に配っているが、積み上がった在庫の山に関係者は頭を抱えている。
市は国の補助金を活用し、2万6220台を購入。昨年4月から1月1日までに1万7038台を各世帯に配ったが、配布率は62・11%にとどまっている。
市防災・危機管理課によると、想定の配布率を見込み、購入数を抑えることも検討した。しかし、2012年の大分県豪雨や16年の熊本・大分地震、17年の福岡・大分豪雨で市内が被災。「孤立」も発生したため、ほぼ全世帯配布を決めた。
在庫のうち、8割は市中心部に配布する予定だったという。これまでに指定避難所に88台、福祉避難所に31台、各自治会管理の公民館などに286台を無料で配った。今年3月までにデイサービスの施設や放課後児童クラブなど約200施設にも無料で届ける方針。事業所向けに販売も考えているという。
Yahooニュースより引用

被災して実感した災害とラジオ


2019年9月に千葉県を襲った台風15号。筆者の自宅も被災し数日間停電と断水に見舞われた。
避難所こそ行かなかったが、残暑厳しい時期にエアコンなしで過ごす(特に夜間)のはとても耐えられる状況ではなかった。
山間部は1カ月近くの停電が続き、携帯電話の電波も繋がり辛い状態になったのを昨日のように覚えている。

そんな災害時にラジオはどうだったか?というと、筆者は台風が通過する深夜にラジコでニッポン放送を聴いていたが、日曜深夜という通常は放送休止をしている時間帯であったものの、30分に一度の間隔で台風情報を流していた。
ただし台風が通過してからは、千葉県以外の地域はそれほど被害が無かったこともあって各ラジオ局は通常の放送をしており、災害の情報はほとんど入ってこなかった。
なお、ニッポン放送は木更津送信所が停電により減力放送及び、東京都足立区にある足立送信所から送信した。
≪関連リンク:<台風15号の影響か?>ニッポン放送、千葉県の木更津送信所(1242kHz、100kW)がトラブルで停波、足立送信所から1kWで減力放送中

地元の自治体と防災協定を結んでいるコミュニティFMはというと、台風の通過する深夜は音楽の垂れ流しが続き、翌日は機器の故障、回線の寸断、停電などで一時休止していた。
急遽送信所まで行って放送を続けたようだが、放送が止まってしまった時点で防災としての役割を果たしていない。

美談にされるコミュニティFMの実情

≪関連リンク:リスナーに届けた希望 台風15号
関連リンクにあるように台風15号でコミュニティFMの活躍が後日談として記事にされるが、本当に活躍したのだろうか?災害時の苦境の中でも放送を続けたという苦労話は記事として書きやすいだけなのでは?と筆者は思う。

実際に市原市のコミュニティFMは災害発生から1週間近く放送ができていない。
想定外の災害と言ってしまえばそれまでだが、実際に災害が発生してから電波が止まるようでは全く意味が無い。
なお、筆者の周りでこの災害時にラジオを聴いて情報を入手した人は皆無だ。ほとんどがSNSやニュースサイトからである。


茨城県のコミュニティFM局は近くを流れる河川が氾濫し、放送機器と局舎が水没。災害時に全く放送ができなかった。
なお、この教訓を生かし現在は高台に移転をしたとのことだ。

「災害時にはスマホ」がこれからの主流になる


台風15号で被災した時、真っ先に情報の入手先としてスマホが活躍した。ただし停電で充電ができず市役所の用意した充電スタンドには多くの行列ができた。
この時、携帯の基地局には多くのアクセスが集まり繋がり辛い状況になったこともあり、マスコミは「災害時に(ネット)スマートフォンは使えない」と報道をした。
だが、被災者を経験してわかったのは、繋がり辛い状況でもほとんどの被災者がスマートフォンで情報を入手しようとしていたという事実。筆者の家は幸い2日ほどで停電は復旧しWIFI(光回線)が使えるので、それほど困らなかったが、繋がり辛い状況は1週間以上は続いた。
それだけ携帯から情報を入手しようとした人が多かったのだろう。

各携帯事業者も臨時の移動基地局を千葉県内各地に派遣し、通信の確保に取り組んでいた。


防災袋の中にラジオと言われ続けているが、災害時に放送ができない状況になってしまうなど、いざというときに役立たずの状況が多発すれば「防災袋の中にはモバイルバッテリー」となる日も近いだろう。

またラジオの場合、被災者までの情報の伝達が、
「情報提供者」>>「役所」>>「ラジオ局」>>「被災者」
となる。
またラジオの場合、聴き逃してしまったらそれっきりだ。

役所自体がSNSで発信できる今は、
「情報提供者」>>「役所」>>「被災者」となり
最新の情報が正確に素早く伝えることができる。

情報発信の一つとしてラジオは有効なのかもしれないが、コミュニティFM局などは市民に普段からラジオを聴いてもらえるような努力をしなければ災害時に思い出してもらう事すらなく、災害協定が無駄なものになってしまう。
また災害時用に簡易的に放送できるシステムを構築するなどの技術的な投資も必要だ。

防災ラジオは本当に必要か?災害時にラジオは有益な情報を伝えることができるのか?今後もラジオ局の真価が問われる。